医院名 |
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小川クリニック |
院長 |
小川 志郎 |
住所 |
〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂1-13-2 ヤママンビル3階 |
診療科目 |
内科、心療内科
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電話番号 |
048-834-5525 当クリニックへのお問い合わせは、お電話にて受付しております。 月~金 9:00~17:30 土 9:00~12:30 ※診察時間外ですとつながらない場合がございますので、ご了承ください。 |
ストレスの中にはどうしても避けられないものもあります。
受験、転勤、転居、家族の病気、死などなど。
これらは受け入れていくしかありませんが、人によりストレスのかかり方、反応の仕方は様々です。
時間とともに慣れたり、薄れたりして克服できることがほとんどだと思いますが、どうしても乗り越えられない時は無理しないことも大切です。
身体的ストレスとしては、例えば3交代の勤務や夜の勤務が多くて睡眠のリズムがうまくいかないという場合。
(これは慣れることも多いのですがどうしても慣れない時)また業務量が多すぎて睡眠時間がどうしても取れない場合、これらの時はまず上司に相談するのがいいでしょう。
改善が難しい時は転職を考えたほうがいいと思います。
精神的ストレスとしては人間関係のストレス、これが日常で1番多いと思います。
これもケースバイケース、その状況とその人の性格により様々な反応として現れます。
対処として大きく分けて3つ、
ひとつ目は自分が変わる(薬などで良くなって気持ちが変わることで自分が変わることも含めます)
ふたつ目は相手(周囲)が変わる、通常はあまり期待できませんが休職したことで周囲が気を遣ってくれるということもあります。
3つ目は環境そのものを変える、転職などを考慮することです。
どうしてもうまくいかない時、よくならない時は早めに心療内科に受診することをお勧めします。
ストレスは思わぬところにも潜んでいます。
アメリカのカリフォルニアやニューヨークなどの14州、地域の司法長官は中国発の動画共有アプリ「TikTok」が若者の精神衛生を害していると提訴しました。
理由は子供が中毒になる可能性を知っていながら標的にして、利益を増やすために依存させている、というものです。
例えば利用の容姿を現実と異なる形に加工するフィルターについて、若者が自身の外見を否定的にとらえることにつながることを問題視しています。また動画の自動再生機能も自らの意思で止めるのを難しくさせている、としています。
さらに自分と周囲を過度に比較して自傷行為に至る例なども報告されているそうです。
アメリカではSNSが若者のメンタルヘルスに悪影響を与えていると問題になっており、同様にインスタグラムも提訴されています。
SNSは使い方によっては非常に有害で、気分転換や情報収集のつもりで見ていても逆にストレスになったりすることもありますから気をつけましょう。
ストレスは同じものでも人それぞれ受け取り方が違い、強くストレスを感じたりそれほどでもなかったりします。
たとえば人前でスピーチするということは苦手な人にとっては大きなプレッシャーに感じます。そのために治療を受ける人もいます。
逆に人前で話すのが得意な人もいます。その典型は政治家の方でしょう。苦手では務まりません。
受験のストレス、就活のストレス、一生を左右するものには相当なストレスがかかりますが、それも人それぞれ感じ方は違うでしょう。
そういうストレスを少しでも減らすとするならば、まず周囲の目や自分への評価を「少し」気にしない、ということを心掛けるといいのではないでしょうか。
「自分がどう思われているか」ということを気にしすぎるとそれがプレッシャーの大きな原因になります。全く気にしない、というのも問題ですがそのバランスが大切です。
それから何事もポジティブに考えること、「きっとうまくいく」と考えることでストレスも軽く感じるはずです。でもこれが難しいんですよね。
今パリオリンピックが開催されて連日盛り上がってますが、選手の皆さんのストレスは相当なものだと思ってみています。
そのストレスこそが努力の原動力になって出場を果たしたのですから、ストレスとは人を動かす、成長させる大事なものでもあるわけです。
でも周囲の期待が高まるほどストレスは強くなり押しつぶされそうになってもおかしくありません。
今回そのストレスから飲酒、喫煙問題を起こし出場を辞退した選手もいますし、思い通りの結果を出せなかった選手もたくさんいると思います。
周囲の期待に応えようと思えば思うほどストレスは強くなりますが、これは日常誰にでも起こることです。仕事の結果を出す、勉強で結果を出すなどいろいろなことにおいて多かれ少なかれ影響を受けています。このような状況でストレスを少しでも減らしたいと思う時は周囲の評価をなるべく気にしない、マイペースを貫くことでしょうけど、オリンピック選手のように日本中の注目を集めたらなかなかそういうわけにもいかないでしょう。
街の喫煙所で最近電子タバコをよく見かけるようになりました。電子タバコに関する健康被害はまだ日が浅くあまり報告がありませんが、数は少ないものの肺炎を起こした症例や動脈血管が障害されたことなどの報告があるようです。
また実験的に肺気腫を惹起するという研究もでているようです。今後10年、20年と使用されるようになると様々な健康被害に関する研究がなされ報道されるようになるかと思います。
「みんなやっているから」といっても安全とは限りません。
先日心身医学会に行ってきましたが、心身医学の世界でもAIやIoTといったデジタル機器を使った研究が進んでいます。
スマートリングという指輪型の機器で一日の心拍や睡眠の状態を測定できるものがありました。(まだ臨床場面では使われていません)スマートフォンと連携させながらリアルタイムで体の状態と心の状態を記録していくという研究でしたが、将来的には天気や心拍数、睡眠などから病気の状態を予測し、悪化することを防ぐ、ということができるかもしれないということです。
また声だけで心理状態を推測するという研究もありました。もっと進化するとスマホのアプリで相手の心が読めるようになる、なんてこともありそうです。家に帰ってきて家族の「お帰りなさい」という声をスマホに取り込むと、奥さんの機嫌がいいとか悪いとかまでわかる、という日がくるかもしれません。
当院では臨床心理師によるカウンセリングをおこなっています。
カウンセリングって何?と思う人もいるかもしれませんので簡単にご説明します。
一言でいうなら言葉、会話による治療です。
でもそれは単なるアドバイスだけでなく、長期的には人間的な成長を促す治療ということができます。
もちろん数回の治療でよくなって終了になる場合もありますし、10年以上にわたり継続している場合もあります。
たまたまその時大きなストレスに遭遇して心身のバランスを一時的に崩したというときは短期間で終了することもありますし、そのまま継続してもいいでしょう。
長期的にカウンセリングを受けた方がいい場合の例として、
1. 性格的に落ち込みやすい、不安になりやすい
2. 人間関係でうまくいかないことが多い(そのため職場をよく変える)
3. 家族との関係に悩む
4. 衝動的な行動が多い(衝動買い、キレやすいなど)
5. 依存しやすい(ゲーム、酒、ギャンブル)
6. 何かを決めるときによく判断を誤る(常識にやや欠ける行動をとることがある)
などのように、いつもそばで相談できる人・または見守ってくれる人が必要と感じる方は、是非カウンセリングを受けられるといいと思います。
睡眠は私たちの健康と幸福に重要な役割を果たします。脳や身体の休養、疲労回復、免疫機能の向上、記憶の固定、感情整理など、多くの重要なプロセスに関与しています。
実際の睡眠時間は個人によって異なりますが、いくつかの一般的なガイドラインがあります。 以下は、年齢別の平均的な睡眠時間の目安です。 •10歳未満: 8〜9時間 •15歳: 約8時間 •25歳: 約7時間 •45歳: 約6.5時間 •65歳: 約6時間 年齢とともに、必要な睡眠時間が減少する傾向があります。また、個々の体質や生活スタイルによっても異なります。自分の体に合った睡眠時間を見つけるために、睡眠習慣を注意深く観察し、適切な休息を取ることが大切です。
睡眠時間が6時間を割ると様々な疾患のリスクが高まります。まれに短くても問題ないという体質の人もいますが、元々7時間睡眠をとっていた人が長期にわたり6時間以下になると健康を害する可能性が高まりますので注意しましょう。
厚生労働省から適度な飲酒の量の目安が発表されました。
アルコールの用量(g)に換算して1日20g以内、というのが適量ということです。
アルコール量=お酒の量(ml)×アルコール度数(%)×0.8(アルコールの比重)で計算されます。
例えばビール(5%)500mlなら、500(ml)×0.05(%)×0.8=20g
となります。20gを長期に摂取した場合大腸癌になるリスクが高まるというデータもあります。
また男性なら40g、女性で20g以上を長期に摂取すると生活習慣病のリスクが高まるということです。
男性ならビール350ml、女性ならその半分にしておくのが無難かと思います。
また不安や気分のおちこみを紛らわすために飲酒することはアルコール依存症になる危険があるため好ましくありません。飲酒後の運動や入浴や薬の服薬前後の飲酒も避けましょう。
最近の脳科学の研究により心理社会的要因で生じる心身症が少しずつ解明されています。
例えば摂食障害の患者さんでは脳の認知制御系に関係の深い背外側前頭前野と報酬系の眼窩前頭野の活動が亢進していて、逆に肥満者ではそれらの活動が低下している、ということがわかったそうです。これらのことは将来的に経頭蓋的反復磁気刺激や経皮的直流電流刺激といった方法で摂食障害の治療ができるかもしれない、ということを示唆しています。
またPTSDの患者さんでは脳の白質障害があるとわかり、PTSDモデルのマウスによる実験ではオリゴデンドロサイトという物質が減少していることがわかり、それを増加させるベンズトロピンという薬剤を投与するとPTSDが改善する可能性があるということです。
心の病ももしかしたらそういった治療で簡単によくなる日がくるかもしれません。
「睡眠時間が長い人も認知症のリスクが高い」と指摘するのは、中部大学生命健康科学研究所特任教授の宮崎総一郎さん。宮崎教授によると、「睡眠時間が1時間、2時間と増えた人ほど発症リスクが高まる」そう。また、「認知症でない男女1517人を最長10年間追跡調査したところ、睡眠時間が5時間未満の人の認知症リスクは2.64倍に、睡眠時間が10時間以上の人も2.29倍に上昇していることがわかった」というのです。
認知症予防には、睡眠不足も「寝すぎ」もよくない。見直すべきは睡眠の「質」です。
・ 起きたら朝日を浴びる
・ バランスの良い朝食を摂る
・ 日中、適度な運動をする
こうした「基本」を押さえて良質の睡眠をとるのが理想ですが、特に高齢になると、「入眠障害」「途中覚醒」「早朝覚醒」などに悩む人も増えてきます。
知ってほしいのは、「年齢を重ねれば睡眠時間は減るもの」だということ。「必要な睡眠時間は、年齢や体質、季節によっても変わる」と宮崎教授。「10代なら8~10時間、成人~50代なら6.5~7.5時間程度、60代以降は6時間程度十分。日中眠気がなく、朝に疲れを感じなければ大丈夫。睡眠時間は人それぞれ違って当たり前なのです」。
睡眠が浅い人や途中覚醒が多い人に、宮崎教授は「睡眠制限療法」を勧めています。「起きる時間を変えず、眠くなってから寝床に入る」ようにすると、「寝床で過ごす時間が適正化されて睡眠が安定する」のだそう。写真の整理や手芸など、適度に手先を動かして「脳も使って適度に疲れた状態だと良く眠れ、寝すぎによる認知症リスクの回避にもつながります」。
最後に、「昼寝」と認知症の関係について。「30分以内の昼寝の習慣がある人は、ない人に比べて認知症の発症率が6分の1になるという研究結果が報告されている」ため、昼寝して損はないでしょう。ただし30分以内で。「1時間以上の昼寝を習慣化していると、今度は認知症リスクが2倍になるそうなので気をつけましょう」。
日頃から適度な運動をして、食事もバランスよく。眠れない時は眠れないことにとらわれずに。認知症予防にも、こうした生活が大切なようですね。
(週刊朝日)
最近うつ病や不安障害などで訪れる人の中に発達障害が隠れている人が多いようです。よく見られる発達障害は大きく分けて二つありますが一つはADHDと、もう一つは自閉症スペクトラム障害(いわゆるアスペルガー)です。
ADHDの特徴は不注意(忘れ物が多い、ミスが多い)、多動(じっとしているのが苦手)、衝動性(カッとなりやすい、衝動的に行動してしまう)などです。
自閉症スペクトラム障害の特徴は対人関係の障害(人の気持ちが理解できない、人に関心が薄い)、興味の狭小化(関心のあるものが少ないがそれに関しては人一倍のエネルギーをかけられる、拘りが強い)、神経過敏(音や光、臭いなど)などが挙げられます。
これらは合併することも多く、程度により社会生活が困難になります。軽度な人はほとんど問題なく生活できていますが、重い人ほど対人関係をうまくやることができず仕事を続けることが難しかったり、うつ病を発症したり生活に支障をきたします。
ADHDは薬物による治療もありますがすべての症状をとることは困難です。カウンセリングなどを行いながら治療しています。
これらの不調がある方は、副腎が疲れて機能低下しているかもしれません。副腎とは左右の腎臓の上にある小さな一対の臓器であり、生命維持に必要なホルモンを50種類以上分泌しています。中でもコルチゾールは、血糖、血圧、免疫機能、神経作用を調整し身体の状態を適正に保つ働きがあります。また、精神的なストレスに限らず、食生活の乱れや寛容汚染など、身体に炎症を起こすストレスにも対抗します。
しかし、ストレス過多が続くと、副腎はそれに対応するためにコルチゾールを適量を超え過剰に分泌します。やがて副腎は疲れてコルチゾールを分泌しづらくなり、心身にさまざまな不調が現れます。
副腎をケアし機能を回復させるには、規則正しい生活で自律神経の乱れを整えることが大切です。コルチゾールの分泌は就寝中の深夜3時頃から増え、朝8時頃ピークを迎えるので、夜12時までの就寝と質の良い眠りを心がけましょう。また、副腎が疲れていると腸が炎症を起こしやすく、その炎症を抑えようとさらにコルチゾールが無駄に使われてしまうので、腸の炎症の引き金となるカフェインや小麦由来の食品には注意が必要です。体の酸化もコルチゾールの無駄遣いに繋がるので、加工食品はなるべく避け、抗酸化に役立つ緑黄色野菜を積極的にとりましょう。
精神的なストレスについては、ウォーキングや軽いスクワットなどで幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを出すことや、腹式呼吸を行い自律神経の働きを整え、心身をリラックス状態に導くことなどが有効的です。
副腎疲労は日本ではまだあまり知られていない症状であり、うつ病と診断されがちですが、抗うつ剤などを使用しても治りません。心身に原因不明の不調が感じられるときは、副腎疲労を疑ってみてもいいかもしれません。
(出典:日本経済新聞 2019/5/18)
たばこに含まれているニコチンは、依存性を伴った毒性の強い劇薬であることは間違いありません。しかし金沢大学の米田幸雄名誉教授は、その劇薬であるニコチンを上手く使うことで「脳の活性化」につなげられるのではないかと考え、マウスによる実験を行いました。すると、ニコチンがアルツハイマー型認知症やパーキンソン病の予防、改善に効果があるとの可能性が示されました。
最新の研究では、脳の神経細胞は1000億個あると言われており、この神経細胞がネットワークを組むことで学習や記憶が可能となります。しかしアルツハイマー型認知症を発症すると、ネットワークを組んだ神経細胞が死滅し、大事な記憶が消えてしまったり今まで出来ていたことがで出来なくなったりしてしまいます。米田氏が実験を始めたのは2010年頃で、マウスの胎児の脳から神経幹細胞を取り出し、これを0.1μMから100μMまでの濃度のニコチン溶液に浸して培養しました。すると、ニコチンを浸さない条件下で培養した幹細胞に比べて、15%から25%多い割合で神経細胞に変化することが確認されたのです。
また、ラットにおいては、脳虚血時に過剰に放出されたグルタミン酸が脳の神経細胞を死滅させることが明らかになっていました。京都大学の赤池昭紀名誉教授による研究では、高濃度のグルタミン酸に暴露したラットの培養神経細胞にニコチンを投与したところ、神経細胞死を抑制する現象が見出されました。ニコチンが神経細胞に対して保護作用を発現することがわかったのです。喫煙行為は、認知症やパーキンソン病に関してはプラスの方向に働いている可能性が高く、非喫煙者より愛煙家のほうが「健康的」といえるかもしれません。(出典:週刊新潮 2019/1/24)
世界保健機関(WHO)は、今年6月に公表した新しい国際疾病分類ICD‐11に、「ギャンブル障害」と並ぶ形でゲーム障害を入れ、精神神経系の病気の一つに位置付けました。
①ゲームをする時間や頻度を制御できない
②ゲームが他の関心ごとや行動に優先する
③問題が起きても続ける
④個人、家族、学業、仕事などに重大な支障が出ている
以上4つが12ヶ月以上続く場合にゲーム障害とみなします。
2011年に国内の病院で初めてネット依存症治療研究部門を設けた久里浜医療センターの樋口進院長によると、特に注目すべきは②であるといいます。ゲームの時間確保が最優先で生活が乱れ、食事、睡眠、排せつといった生きていく上で必要な行為すら二の次になります。神戸大病院、久里浜医療センターともに予約は2ヶ月先までいっぱいで、患者は中高生の男子が目立ちます。神戸大精神医学分野の曽良一郎教授によると、受診しない人も合わせると患者数は国内で数百万人いるとされるアルコール患者並みに多い可能性もあるといいます。
オンラインゲームを続けることによって脳の構造や働きに薬物依存のような変化が現れるかどうか、MRIなどの検査データを使って調べる研究は緒についたばかりです。脳機能は機能的MRI(fMRI)で血流変化などをもとに検査でき、衝動の制御を担う脳の前頭前野と呼ばれる部分の機能低下とゲーム障害になるリスクとのかかわりが明らかになってきました。しかし、脳の状態からゲーム障害かどうかを判定できるほどには関係性の解明はできていません。
治療の際は患者をゲームから遠ざけ、運動、食事、会話、カウンセリングなどを組み合わせます。泊りがけのキャンプなどもあり、イライラが激しく暴力をふるう患者などは入院を勧め、何より治療の継続が重要です。また、他の精神疾患がないかの見極めも大切で、久里浜医療センターをネット依存などで受診する患者の2割程度は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状もみられます。ゲーム障害の治療薬はありませんが、ADHDを薬で治療するうちに「キレやすい」といった問題が減る場合もあり、注目されています。(出典:日本経済新聞2018.11.26)
最近「機能的磁気共鳴画像(FMRI)」を使った研究において脳のどの部位がどういう働きをしているかということが明らかになってきています。
その中でDMNというひとつのネットワークが注目されています。部位としては頭頂葉内側部、前頭葉内側部、前頭葉背外側部などに分布しており、自己生成的思考、自己参照処理などに関係していると言われています。
例えば失感情症の人はその部位の連結が低下している、つまり自分がどういう状態であるか認識しにくい、ということです。またうつ病の場合DMNの過活動がみられ、いろいろ考えすぎるということになるでしょうか。
これまで外から観察されていた症状が脳の内部で証明される時代になったと言えます。
心療内科で処方される薬には抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬、気分安定薬などがありますが、これらはほとんどが向精神薬に指定されており、車の運転は禁止となっています。実際は日常生活で全く運転しないわけにもいきませんから、ほとんどの人が薬をのみながら運転はしています。でも人により眠気がでることがあるのは事実ですから、医療機関、製薬会社とも「運転してもいいですよ」というわけにもいかず、「禁止」となっているわけです。ほとんどの場合、運転に支障をきたすくらいの眠気がでることはありません。でも事故の可能性はありますから薬を飲んで、少しでも眠気を感じたら運転はしないようにしてください。
有名なプロゴルファーが処方された薬を飲んで逮捕されたニュースがありましたが、お酒も薬も「飲んだら乗るな」と思って十分注意してください。
最近の遺伝子の研究によれば、エピジェネティクスという概念が注目されています。それは「遺伝子の塩基配列の変化を伴わない機序での遺伝子転写を調節するメカニズム」と定義されています。要するに遺伝子が転写される過程で環境因などにより修飾され変化する、ということです。何らかの環境因から精神疾患を発症するというのはこのエピジェネティクスが関係している可能性があります。つまり長期間ストレスにさらされると遺伝子が変化してうつ病になりやすい体質になる、と考えてよいでしょう。
逆に考えれば環境(生活習慣など)を整えると遺伝子が変化しストレスに強くなったり、癌になりにくくなったり、太りにくくなったりする、ということもできるかもしれません。
数十年前まではうつ病は今ほど多くなく、珍しい病気でした。戦争の前後のように国民全体が大きなストレスを抱えていた時期よりも平和な現代社会のほうがうつ病が増えているというのは、現代社会がもつ特有の環境因がうつ病に関係している、と言っても過言ではないと思います。
最近みられる女性の患者さんで、イライラして夫や子供に怒りをぶつけてしまう、というケースが見られます。夫の些細な言動が許せなくて怒鳴ったり時には殴ったりすることもあります。あるいは子供がなかなかいうことを聞かなくてキレてしまうのです。そういう時は大体何の理由もなくかなしくなって涙が出たりします。
このような場合は気分障害の可能性があり、薬でよくなることがよくあります。不安定だった感情が治療により安定すると、同じことでも気にならなくなってイライラしなくなります。そうなれば夫婦関係や親子関係も自然とよくなります。
もちろんすべての夫婦関係が良くなるわけではありませんが、「なぜか些細なことでイライラする」と思ったらご相談ください。
これまで睡眠剤といえばベンジアゼピン系の薬剤が主流でしたが2014年に全く新しい睡眠剤が登場しました。
覚醒の中枢から産生されるオレキシンという物質の受容体への結合をブロックする、つまり覚醒の働きをするオレキシンの作用を妨げることで睡眠をもたらすという機序のものです。オレキシン受容体拮抗薬、商品名で「ベルソムラ」という薬です。
研究によるところ、これまでの薬剤よりも副作用が少ない、不眠症の治癒段階にもっていきやすい、などの特徴があるそうです。当院でも使っていますが、まだはっきりとしたことはいえませんが、今までの睡眠剤でなかなか終結できなかった、なんとか薬をやめたいという方は一度お試しになるのもいいかと思います。
ただ不眠症そのものが高血圧と同じで「年齢的な体質の変化」、という部分が大きいので完全に止められるケースは少ないのではないかと思います。
最近テレビや雑誌など腸内細菌がよく話題になっていますが、心療内科の世界でもトッピクスのひとつになっています。腸と脳はつながっている、それは以前から言われていたことでしたが、さらに研究が進みいろいろなことがわかってきました。
例えば動物実験で腸内細菌をゼロにしたマウスはそうでない普通のマウスに比べてストレスに対する反応が強い、つまりストレスに弱いという結果がでています。また発達障害に似たような落ち着きのない行動をとったりすることもあるようです。これは腸内細菌によってストレスに対して強くなったり弱くなったり、性格まで変化させるという可能性があるということです。
またストレスがかかると下痢をするというのは過敏性腸症候群でよくみられることです。逆に、これも実験ですが腸に痛み刺激を与え続けると不安が高まりやすい、ということもわかってきました。腸から脳への信号で精神状態が変化するということです。
それらの結果から腸内細菌がよくないと不安障害やうつ病に発展するかもしれない、ということになります。逆に腸内細菌をよくすることで不安障害やうつ病がよくなるかもしれない、ということも言えそうです。
健康な動物の便を不健康な動物の腸に移植して健康にする、という研究まで進んでいるようです。そのうち病院でも健康な人の便を移植する治療法が確立する日がくるかもしれません。